(番外編)たい焼きと移動販売車と水鳥と私

大学時代の友人から約1年前にたい焼きを勧められた。


「一丁焼き?」



不思議な名前に惹かれた。金型がつながっていて一度に5匹くらい焼ける「養殖もの」に対し、一度に1匹ずつ金型でバランスを取りながら焼く「天然もの」のたい焼きを提供する。餡子もこだわりの店から仕入れ、単体でも販売もしている。


「本物だ。」


そう思った。移動販売車で、なんと自宅から5分ほどのスーパーにも毎週木曜日にくる。一度食べてから虜になり、通うようになった。

よくよく調べるとそのたい焼き屋さん、ツイッターアカウントがある。


仲良くなりたい!

もっとたい焼きのことを知りたい!



そう思い、アカウントを新たに作成、即フォロー。来店を続けるうちに名前を覚えてもらえるようになった。


ただ、よくよく調べると、出店日は18時までしか開店しておらず、悪天候だと早じまいまたはお休み、材料切れで閉店という、こだわりの出店スタイル。


当時、自分の職場の退勤時刻は16時40分。

職場からたい焼き屋(自宅近くのスーパー)までクルマで片道1時間。


だらだら仕事をしている暇はない。


となると仕事のスタイルを見直して定時近くに退勤するしか、たい焼きをゲットする術がない。


そこで、特に毎週木曜日は仕事の生産性を上げて、手を抜かず充実させ、たい焼きを買いにいくという「たい焼きチャレンジ」がスタートした。


もともと土日は家族と過ごすために一切仕事をしなかったが、平日はその分、ダラダラと放課後過ごしていた。

家族一緒に食事しない日などざらにあった。


ここを変えよう!

せめて木曜日は定時に帰ろう!


そう思い、時間の使い方を見直した。

このチャレンジをする上でこの頃からツイッターで活躍していたさる先生@saruesteacher の実践がかなり役立った。



何となく印刷室でやっていたプリント作りは、長期休みにやることにして、最低限のものだけ木曜日以外に用意するようにした。

宿題は朝のうちにすべて添削し、翌日の課題を渡すようにした。

その日に本当にすべき仕事だけを紙に書き出し、それが終わったら退勤の準備を始めることにした。


これだけで、飛躍的に仕事の効率が上がり、木曜日に定時退勤できるようになった。続けているうちに、他の曜日も定時退勤できる日が増えてきた。

無事ゲットできてたい焼きを頬張った喜びは何にも代え難かった。



この4月から新しい職場に異動し、自転車通勤となった今でも、たい焼きチャレンジはライフスタイルになっている。

5 授業への活用法の提案

 これまでの経験をもとにした、授業など学校での効果的な活用を次のように提案する。

  1. 国語授業

私の地域で使用されている光村図書の国語教科書を例に挙げると

1年 ほんは ともだち    むかしばなしが いっぱい

2年 本はともだち           お話クイズをしよう

3年 本は友だち              本を使って調べよう

4年 本は友達        「読むこと」について考えよう

5年 本は友達        広がる,つながる,わたしたちの読書

6年 本は友達        私と本

 

もはや、私などが述べるまでもないが、すべての学年に小単元で読書活動が組み込まれている。これを活用しない手はない。

 

では、どうするか?

 

そう、「着火点」にするのである。私の当時の勤務校のように、学校での取り組みがなければ、「着火点」となりえない。なければ、その場を作ればよい。

上記の単元に入る「0時間目」を国語や学活などでとる。(学活の内容には図書に親しむという項目が正式にあるため活用できる)その時間でビブリオバトルを行う。例えば1年生であれば、大好きな昔話を紹介すると、その本から読書活動が広がることが期待できる。

「着火点」から「発火」した子ども達は「またビブリオバトルをやりたい!」と言ってくるはずである。こうなればあとは、朝の活動や学活、クラスのお楽しみ行事などで子ども達から自然に活動が始まる。理科の時間に図鑑を紹介したり、家庭のレシピ本を紹介したりと、他教科にも広げられる。国語の授業から様々な活動へと「発火」させることができる。

 

2委員会

図書委員会が存在しない学校は、おそらくないはずである。私は図書委員会担当として通常月1回行い、読書月間だけは回数を増やした。同じ立場にある先生はぜひチャレンジしていただきたい。デモンストレーションを何度かすると子ども達はすぐに「着火」する。なぜなら図書委員に立候補する子の多くは「読書好き」だからである。子ども達の熱が冷めないうちに活動を始める。管理職や他の先生の賛同が得られなかった場合は、読書月間などの特別な行事で行えばよい。そこで活動を見てもらい、賛同が得られれば幅が広がる。委員会の子ども達は、ビブリオバトル普及の先導者として、自信を持って活動してくれるはずである。

 

では、他の委員会担当だったらどうすればよいか?

ゲストティーチャーとして図書委員を巻き込めば何の問題もない。担当の先生に思いを話し、休み時間などにデモンストレーションを行って「着火」すれば、子ども達から活動が始まる。直接関われない立場なので、初めは行事だけの開催にとどめておくのが良いかもしれない。担当の先生との連携が必要不可欠になる。

ちなみに私も今年度職場を異動し、図書委員会担当からも外れた。上記のようにゲストティーチャーとして子ども達を「着火」させ、巻き込み始めている。秋には大きく「発火」させられるように準備中である。

 

3地域行事

休日に地域の書店や図書館などでビブリオバトルを行っている自治体が少しずつ増え始めている。私は市のビブリオバトルサークルに所属していることもあり、休日に時々参加しているが、ここでは老若男女あらゆる年代層の人が活動している。先生達自身がこういった場に参加して楽しんでみる。そして体験談とともに学校で興味を持った子ども達にこういった場を紹介し、一緒に参加できれば、「発火」はさらに広がっていく。

4 私の現場での取り組み②

次のステップとして「広範囲への発信」を考えた。

具体的には

  1. 普及させる立場になる
  2. 今の私の活動が適切か第3者に判断してもらう
  3. メディアに発信する

 

  1. は「ビブリオバトル普及委員」。書類選考、テレビ電話選考を経て採用される、ボランティア役員。現在特に権限はないが、普及委員同士ネットワークが広がり、講師を行う場合に有利な場合もあった。さっそく手続きを進めていくと、テレビ電話採用担当は、なんとあのAさん(前回のブログを参照)だった。しかも「あーテレビ電話じゃなくて直接お話してもいいですよー。」ものすごくフラットな方だった(笑)わたしのこれまでの活動を話し、即採用していただけた。
  2. Aさんに幹部の誰かに見に来てほしい旨を話すと「じゃあわたしが行きましょうか?」とフラットにお返事をいただき、視察のために学校訪問をしていただけることになった。

  ※なんだかゆるい方に見えるが、ビブリオバトル普及委員会関東地区副部長であ  り、某有名書店の社員さんである。講師として日本全国を飛び回る超多忙な中、予定を合わせてくださった。

  実際に見ていただいた感想は「とても子どもが楽しそうで基本何の問題もないが、  強いて言うなら発表中は、子ども達がもう少し静かにしているとなおよい。」ということであった。ちなみにこの少し前、Aさんの勤務する書店は、本屋ビブリオバトルの全国大会でチャンピオンに輝いていた。にこやかに帰っていくAさんの後ろ姿は、とても神々しく見えた。まさに恩人である。

 

 3昨年度、管理職に許可を取り、メディアに取材の依頼を開始した。7月に地元タウン紙、11月に読売新聞地方版、ラジオへの出演と、発信することができた。ただこれは数か月で忘れ去られてしまった。長続きするものではないと痛感した。

 

普及委員としても、出張に行った時に他校の先生に声をかけたが、そもそもビブリオバトル自体知らない先生がまだまだ多すぎた。

そこで、私が目指す今後のステップは、「先生への発信」である。ご縁があって全国の先生達と関わる機会が少しずつ増えてきた。今後は講師として、自らを着火点となり、多くの先生達に楽しみながらビブリオバトルを体験してもらい、より多くの子ども達、学校、地域に発火させられるような発信をしていきたい。

3 私の現場での取り組み①

私とビブリオバトルとの出会いは約5年前。夏季休業中に、たまたま参加した所属エリア管内の図書に関する研修だった。参加者は教員の他に学校司書、図書館司書、読み聞かせボランティアをしている保護者など。この研修で講師をしていたのが、のちに大変お世話になるビブリオバトル普及委員関東支部の副部長Aさんだった。有名書店の社員として、すでに各地で実績を残しているAさんは、学校や地域の図書館にさらに普及させたいと思い、講師依頼を引き受けたようだ。

この研修で脳に「カツーン!」と何かが打ち込まれる思いがした。

そして、研修の持ち物の中に「おすすめしたい本1冊」と書かれていた理由がわかった。

そう、研修はビブリオバトル体験会だった。

4人ひと組のグループに分かれ、バトル開始!私のテーブルには他市の図書館司書、他市の中学校の学校司書、そして同市の読み聞かせボランティアのお母さんだった。

正直この時、それほど吟味せずに、教室に置いてあった絵本を持ってきた私は、案の定、5分を待たずにしゃべることがなくなってしまい、おろおろしているうちに時間終了。※公式ルールでは、持ち時間を何としてもアドリブで消化しなければならない。他の方も未経験者ばかりだったらしく、同じように悩んでいた。

 そしてチャンプ本決定。なんと私が持ってきた本が選ばれてしまった!(笑)選考理由としては「親しみを持って読める」「ユニバーサルな視点で作られている」など、かなりありがたいお言葉をいただいた。そして、この時、ものすごく嬉しい気持ちになった。この気持ちをたくさんの子ども達に伝えたいという思いが、私の活動の原点になった。

 

  自校でビブリオバトルを取り入れた活動をすれば、必ず本を読む子が増える!そう確信した私は、活動内容を考えた。

私は10年近く特別支援学級担任をしている。当時も支援旧担任だった。支援級の児童の中には公式ルールが難しくて理解できない子もいる。でも、見学していたら、おすすめの本に興味を持ってくれるかもしれない。

そうだ!学校全体を巻き込もう!

夏休み明け、打合せで全職員に以下の活動案を提案し、了承していただいた。

  1. 図書委員会担当である私が、委員の児童と毎月1回、多目的スペースで行う。(図書室は静かに本を読みたい子もいるため)
  2. 児童は自由参加。テーブルに座って見学するだけでも可。先生達も積極的に見に来てほしい。
  3. 学校行事ではないが、活動をおたよりなどで積極的に広めてほしい。

 

こうして取り組みは始まった。しかし当時の勤務校は体育活動に積極的で、基本的に休み時間は外遊びが奨励されていた。強制ではないにしても、休み時間、しかも、雨が降っていない日に図書室で読書している子はとても少なかった。

 図書委員の子ども達の前で私がデモンストレーションを行った。何度か練習をしてから公式ルールの掲示、校内放送でお知らせをして、いよいよ第1回のビブリオバトル開始。

 集まったのはたった3人。図書委員の子どもが20人ほどだったので、ほぼ図書委員会。盛り上がりはしたものの、読書活動が広がるのか不安になるスタートだった。

 しかし、ここから子ども達に情熱の「着火」が起きた。回数を続けていくうちに「ファン」がついた。その子は読書が大好きで恋愛小説やファンタジー小説などを紹介し、9月、10月とチャンプになり続けた。そう、研修で私がチャンプになった時と同じ感動を味わったのである。11月は読書月間だったので特別に月4回、つまり週1回に増やして開催した。すると「ファン」の子は、友達を連れて参加するようになった。同様に図書委員の友達も自然と集まってくるようになった。見学OKにしていたので、最初は多くの子が見学していたが、ビブリオバトル参加者も増えた。テーブルが足りないほど来るようになった。全校500人を超える大規模校だが、11月は図書委員を除く1回の参加者が100人を超えた。「着火」が成功した瞬間だった。図書室で利用する子は、雨の日は毎回ほぼ満員、晴れの日も10人前後が利用するようになった。わたしが担当している支援級の子も何人かは見学に行って喜んで帰ってくるようになった。

 「ファン」は15人ほどに増え、開催すれば最低でも彼らは参加してくれた。ビブリオバトルが日常となった。

1 ビブリオバトルとは?魅力って何?

ここでは、ビブリオバトルの概要とその魅力について述べる。

 

ビブリオバトルとは、分かりやすく言えば

「自分の大好きな本のプレゼン大会」である。

2007年に京都大学で始まった活動で、様々な形態で広まってきた。

基本的なやり方としては

⓵3、4人のグループになり、自分の好きな本についての思いを5分間(小学生までは3分間)で語る。

②全員終わったら、一番読みたくなった本(チャンプ本)を選ぶ。

たったこれだけである。私の経験上、小学校1年生から老若男女だれでもできる。地域団体や書店、大学などが主催してビブリオバトルが行われることもあり、私も何度も地域の方々と体験した。

※他の形態としては、大勢の前で何人かが発表するやり方もあるが、特に授業で行う場合は上記のやり方がおすすめである。

 

この活動の利点としては

⓵図書館や会議室だけでなく、喫茶店やファミレス、自宅でも3,4人集まればできる。つまり、場所をほとんど選ばずにできる。

②アドリブで本に対する熱い思いを相手に伝える。すると、紹介してもらった本で読みたい本が増えたり、普段関わりのなかった友達の新しい一面に触れて読書の話題で盛り上がるようになったり、チャンプになって発表に自信を持てるようになったりと、読書の輪が広がる。

③活動に慣れてくると子ども達から自然にビブリオバトルは始まるようになる。学校の休み時間だけでなく、放課後、自宅や公民館などで、休日に図書館などで行うようになり、地域の人達と関わるコミュニケーション手段となる。

 

よく「チャンプにならなかった子がショックを受けてしまわないだろうか。」という声を聞くが、私の提案した小グループ形態ではグループ内でのいわば「低くていくつもある表彰台」に乗るようなものである。選ばれなくても「次があるさ。」と思えるし、しかし、選ばれるととっても嬉しい。

 

一度点火させるだけで、こちらが提示しなくても子ども達同士が自然着火するように読書への興味を高められる、不読率低下ストップのための画期的な活動なのである。

 

2 どの子も輝く読書活動を!学校ビブリオバトル

学校での読書活動の大切さが話題になって久しい。私が現場でよく聞く声としては、

  1. 読み聞かせやブックトークだけでは、習慣化させるのが難しい(特に高学年)
  2. 読書が好きな子どもとそうでない子どもの読書量の差が激しいため、一斉指導が難しい。

などである。

文科省が2017年に行った「子供の読書活動の推進等に関する調査研究」では、

  1. 不読率(1か月で読んだ本の冊数が「0冊」と回答した生徒の割合)は、小学生が1割未満、中学生が約1~2割、高校生が約3~4割となっている。
  2. 本を読まない理由としては、「ふだんから本を読まないから」と答えた児童・生徒が多い。

つまり、読書の楽しさに普段から触れている子が少なく、そのままその状態を続けていれば、成長するにつれてますます読書の機会が減ってしまうということが危惧されているのである。

 

この打開策として、私は学校でのビブリオバトル(以下学校ビブリオバトル)について推奨したい。

 

では、ビブリオバトルとは何か?

最近メディアで取り上げられてはいるものの、内容をよく知らないため実践しようにもノウハウを知らないという先生方がまだまだ多いのではないか。

 

そこで、できるだけ簡単に(一度体験すればほぼ確実にできる)学校ビブリオバトルの活用法や私のこれまで実践を伝えていきたい。

具体的には

ビブリオバトルの魅力って何?

2私のこれまでの取り組み

3授業への活用法の提案

の順に述べていく。