3 私の現場での取り組み①

私とビブリオバトルとの出会いは約5年前。夏季休業中に、たまたま参加した所属エリア管内の図書に関する研修だった。参加者は教員の他に学校司書、図書館司書、読み聞かせボランティアをしている保護者など。この研修で講師をしていたのが、のちに大変お世話になるビブリオバトル普及委員関東支部の副部長Aさんだった。有名書店の社員として、すでに各地で実績を残しているAさんは、学校や地域の図書館にさらに普及させたいと思い、講師依頼を引き受けたようだ。

この研修で脳に「カツーン!」と何かが打ち込まれる思いがした。

そして、研修の持ち物の中に「おすすめしたい本1冊」と書かれていた理由がわかった。

そう、研修はビブリオバトル体験会だった。

4人ひと組のグループに分かれ、バトル開始!私のテーブルには他市の図書館司書、他市の中学校の学校司書、そして同市の読み聞かせボランティアのお母さんだった。

正直この時、それほど吟味せずに、教室に置いてあった絵本を持ってきた私は、案の定、5分を待たずにしゃべることがなくなってしまい、おろおろしているうちに時間終了。※公式ルールでは、持ち時間を何としてもアドリブで消化しなければならない。他の方も未経験者ばかりだったらしく、同じように悩んでいた。

 そしてチャンプ本決定。なんと私が持ってきた本が選ばれてしまった!(笑)選考理由としては「親しみを持って読める」「ユニバーサルな視点で作られている」など、かなりありがたいお言葉をいただいた。そして、この時、ものすごく嬉しい気持ちになった。この気持ちをたくさんの子ども達に伝えたいという思いが、私の活動の原点になった。

 

  自校でビブリオバトルを取り入れた活動をすれば、必ず本を読む子が増える!そう確信した私は、活動内容を考えた。

私は10年近く特別支援学級担任をしている。当時も支援旧担任だった。支援級の児童の中には公式ルールが難しくて理解できない子もいる。でも、見学していたら、おすすめの本に興味を持ってくれるかもしれない。

そうだ!学校全体を巻き込もう!

夏休み明け、打合せで全職員に以下の活動案を提案し、了承していただいた。

  1. 図書委員会担当である私が、委員の児童と毎月1回、多目的スペースで行う。(図書室は静かに本を読みたい子もいるため)
  2. 児童は自由参加。テーブルに座って見学するだけでも可。先生達も積極的に見に来てほしい。
  3. 学校行事ではないが、活動をおたよりなどで積極的に広めてほしい。

 

こうして取り組みは始まった。しかし当時の勤務校は体育活動に積極的で、基本的に休み時間は外遊びが奨励されていた。強制ではないにしても、休み時間、しかも、雨が降っていない日に図書室で読書している子はとても少なかった。

 図書委員の子ども達の前で私がデモンストレーションを行った。何度か練習をしてから公式ルールの掲示、校内放送でお知らせをして、いよいよ第1回のビブリオバトル開始。

 集まったのはたった3人。図書委員の子どもが20人ほどだったので、ほぼ図書委員会。盛り上がりはしたものの、読書活動が広がるのか不安になるスタートだった。

 しかし、ここから子ども達に情熱の「着火」が起きた。回数を続けていくうちに「ファン」がついた。その子は読書が大好きで恋愛小説やファンタジー小説などを紹介し、9月、10月とチャンプになり続けた。そう、研修で私がチャンプになった時と同じ感動を味わったのである。11月は読書月間だったので特別に月4回、つまり週1回に増やして開催した。すると「ファン」の子は、友達を連れて参加するようになった。同様に図書委員の友達も自然と集まってくるようになった。見学OKにしていたので、最初は多くの子が見学していたが、ビブリオバトル参加者も増えた。テーブルが足りないほど来るようになった。全校500人を超える大規模校だが、11月は図書委員を除く1回の参加者が100人を超えた。「着火」が成功した瞬間だった。図書室で利用する子は、雨の日は毎回ほぼ満員、晴れの日も10人前後が利用するようになった。わたしが担当している支援級の子も何人かは見学に行って喜んで帰ってくるようになった。

 「ファン」は15人ほどに増え、開催すれば最低でも彼らは参加してくれた。ビブリオバトルが日常となった。